J 経済・産業・環境エネルギー政策

1、デフレ経済の根幹を正す


1.問題意識

 この20年、わが国は名目GDPが増加せず、特にこの3年で、50兆円を超えるGDPが減少し、急激な経済収縮が起きている。給料が下がっては誰も住宅ローンを借りないように、デフレ下においては、利下げや量的緩和という金融政策だけでは、民間企業は投資をしない。

経済を収縮から拡大へ方向転換するためには、政府が積極財政をする以外に道はない。具体的には、政府の建設国債の発行等による需要創造が不可欠である。


・ 今日、国債残高がGDPの2倍を超えるに至るという状況の中で、国債の破たんが声高に叫ばれ、財政支出の削減がさらに進められようとしている。これはマクロ経済政策として完全に間違っている。

 高齢化による社会保障費の増大と少子高齢化による税収の減少から、一定の増税は必要不可欠であるが、現下の税収不足は、円高放置による景気減退などの失政の結果であり、円高を是正し、建設国債の発行等の財政出動を行い、デフレ解消を実現したうえでの消費税の増税が必要となる。

2.政策の展開

 食べてゆける農業を作りあげるためには、農地の集積が必要であり、農地の所有は所有として維持しながら、農地の利用を意欲ある農業者や法人に集め、まさに、わが国の実態を踏まえた「日本型地域適合複合経営体」を作りあげ、それらを対象とする経営所得安定制度を確立する。



・ 具体的には、地域や集落の中で、農業を中心にやってゆこうとしている意欲ある者や、集落営農など地域の実態に応じた「多様な担い手」を対象に、経営所得を直接支払いで補てんする仕組みを作りあげる。また畜産や園芸等の多様な経営に対しても、経営所得安定制度を再構築する。

・ このため、農地を農地として利用している農業者に対して直接支払いを行う「多面的機能評価の直接支払い法」を制定するとともに、地域で定めた多様な担い手に対して経営所得を補てんする「担い手育成総合支援法」を制定する。

・ 農地の社会的公共的な利用の意義と責務を法的にも明確にしたうえで、農業地域と都市計画地域との調整、市街地のいたずらな拡大の抑制、美しい景観の維持等を国の基本政策として確立する。

・ 国土の7割を占める森林と、それが作り出している日本の自然と景観の維持、豊富にある木材が作りあげてきている日本の家屋や文化、さらに地球温暖化の中で、CO2の吸収源対策としても、山を守る取り組みを強化する。

また、海に囲まれた島国として、魚を中心とする食文化の維持、漁港の整備、加工流通施設の充実、国境措置の維持等、水産業の振興対策を強化する。




2、産業の活性化をすすめる


1.問題意識

これまで日本は、勤勉な国民性ともの作りに見られるように、創意工夫により鉱工業品の競争力を強め、貿易立国として先進国の仲間入りをしてきた。しかし、世界経済の国際化の中で、途上国の進出によりもはや有利性を発揮できなくなってきている。  

新しい産業へのシフトを構造的、政策的にどう進めるか、また、地球的課題となっている再生可能エネルギー産業等への転換が必要になってきている。


・ 過去の日本の経済はもの作りを中心とした輸出産業で外貨を稼ぎ、食料やエネルギーを輸入して国力を発展させてきたが、急激な円高やエネルギー価格の高騰、内需の不振は、国内のもの作り産業に深刻な影響を与えている。

・ しかしながら、日本の優れた技術・技能を生かしたもの作りは、これからも日本の発展をけん引する重要な産業である。

・ そのためには、世界のトップレベルの科学技術の研究開発を先導して産業の振興につなげるとともに、経済成長をけん引するソフト分野の産業の育成が必要である。


2.政策の展開

 高齢化や環境制約など経済社会の課題の解決を官民一体となってはかり、わが国を世界最先端の技術やサービスの実験場とすることで、新しい内需を切り開いていく。これにより、世界で売れる製品・サービスを提供し、付加価値の高い外需を獲得することができる。特に、日本の企業の99%を占める中小企業の潜在力を発揮させる政策を遂行し、雇用を確保しなければならない。


・ 具体的には、多様化する消費者のニーズにこたえることのできる少量多品種生産技術の開発、地球・宇宙等の自然の未知の分野の技術、自然災害予知の技術、予防医学の技術等、日本独自の技術を開発して、労働力の安い発展途上国との競争に勝たねばならない。

・ 経済成長のための技術開発の促進のためには、大量の資金を必要とするため、企業の体力の増強が必要である。

・ また、企業統合の審査基準の緩和や手続きの簡素化など、先端産業・特殊技術などの国家的戦略分野での大規模な企業結合を推し進めることが必要であり、独占禁止法を改正し、世界価格決定力の向上と、先進各国の協調介入による為替の安定のための国際的な枠組みを構築する。

・ 今後成長が見込め、かつ、高度な科学技術を要するIT、ライフサイエンス、環境、ナノテクノロジーの4分野を中心に、国家プロジェクトとして推進する。

  また、広く技術力のある中小企業を参画させ、日本の産業の土台である中小企業の振興をはかる。


3、農林漁業の活性化をすすめる


1.問題意識

 今、各界から、わが国の農林漁業の構造改革が求められている。しかし、わが国の農林漁業政策の方向を考えるにあたっては、わが国が、アジアモンスーン下における山の多い島国であるという諸制約を踏まえてかかる必要がある。これら制約は、経済原則だけでは克服できない問題である。

  そうした制約の中においても農林漁業の果たす役割を明確にし、その努力を前提に、わが国農林漁業の重要性について国民合意を実現していくことが必要である。


・ わが国農業は、水田農業を中心に、小規模零細な経営でしか存在できなかったが、これらはアジア各国に共通した地政学的な実態である。加えて、わが国は戦後の農地解放で自作農を作り、その農地所有が、敗戦後の食糧危機の克服を可能にした。 

しかし、その後の高度成長下での地方への工場や住宅の分散は、兼業化と無原則な農地の転用を進めることとなった。その結果、土地バブルが生じ、農地の資産化が進んだ。農業を産業として自立させるための基礎的条件となる農地の規模拡大が、今もこうした制約のもとにある。

2.政策の展開

 当面するデフレ脱却をはかるため、災害列島日本を強靭化し、防災減災対策を早急に構築し、さらに将来の成長基盤を築く目的で厳選された戦略的な公共事業の着実な実施など、内需拡大・所得向上のための積極的な財政出動を行う。


・ 具体的には、日銀による長期国債の買い取りやリスク資産の購入増額による量的緩和等の積極的な金融緩和策をあわせて実施する。

また、超低金利政策の長期化による家計部門の金利逆ザヤを解消するため、日銀のゼロ金利の解消、有意義な物価指標の構築等、金融政策の転換を検討する。

・ 海外現地向けの汎用品や一般大衆財の海外現地生産を拡大し、それらによる海外利益を国内還元するメカニズムを構築する一方で、国内では先端的素材・部品、特殊加工品などの産業群を創出し、積極的輸出展開を行い、それらを国内雇用に直結させるなど、世界の需要の内需化・輸出戦略の積極的な推進をはかる。



4、強靭な国土の形成をすすめる


1.問題意識

戦後約70年間において、わが国の国土の利用の仕方は大きな変化を遂げてきた。

一言でいえば、過密・過疎が進行し、都市・地方それぞれの地域で大きな問題を

抱えている。自然災害の大きな脅威にさらされているわが国では、これらに対するリスクコントロールが必要である。また、自然災害のみならず、軍事的なリスク、エネルギーリスク等様々なリスクも存在し、これらに的確に備えるための政策が重要である。

 そのためには、単に施設の強度をあげるということにとどまらず、国土全体の利用の仕方も含めて、まさに、ソフト・ハード両面からの強く、しなやかな国土づくりが必要である。

 これが、国土強靭化の精神である。


2.政策の展開

 政権交代以降失った、農地、農村、林野、治水、漁港予算をはじめとする100年、200年先を見越して進められる国民の安全・安心、国際競争力強化等にかかわる社会基盤整備予算を復活する。


・ 具体的には、今後10年間が災害頻発時期に来ていることを直視し、ソフト・ハード両面で災害に粘り強い国・都市・街を作り、バックアップ機能を強化した国土を形成する。また、東アジア諸国をはじめとして外に開かれた国土の建設を進める。

・ そして、今後の10年間を国土強靭化に向けた集中投資期間とし、当面必要な投資(一つの試算では200兆円)を行う。このうち、首都圏では首都圏直下型地震が起こったとしてもそれに十分耐え、なおかつすぐに回復できる強く、しなやかな構造を作りあげる。あわせて、国土強靭化国民運動も展開する。

・ また、有事に備えた自然エネルギーの促進、原発耐震化、原発周辺の堤防強化、メタンハイドレート等のエネルギーシステムの構築をはかる。

 あわせて、環日本海経済圏の構築と、シルクロード、アジア等に開かれた社会基盤への投資等、日本全体の経済力の維持拡大を推進する。

・ 津波震災被災地の早急な復興をはかり、信頼される社会基盤の整備を進める。

・ 最も発生確率の高い東海地震の有事における東西交流路の確保、整備効率の高い高速道路網のミッシングリンクの解消、地方交流圏の新幹線の延伸等により、強く、しなやかな国土づくりと都市間連携の強化を進める。

・ 国土の均衡ある発展という政策目標を復活させ、橋梁、上下水道等インフラの老朽化対策、第2首都の検討等、強靭な国土構造を実現する。

・ 国土強靭化基本法に掲げた諸政策を総合的に展開する。



5、環境・エネルギー政策を転換する


1.問題意識

 東日本大震災を契機とした福島第1原子力発電所の事故は、国民生活・地域経済・産業政策・環境に対して甚大な被害を与えた。

これまでの、原子力発電等、科学技術に対する過信があったことを反省してゆかなければならない。その一方で、国民自らの生活と、それを支える産業活動におけるエネルギーの安定供給も人の命を守るために必要であり、その整理をしてゆかなければならない。


・ こうした観点から、原子力利用については、国民が抱いた安全性に対する疑問に誠実にこたえ、国民的議論を尽くす。ただし、科学技術立国として原子力の平和利用への道は閉ざさない。その際、大規模事故に対する万全の安全対策をどう講ずるか、放射線廃棄物の処理をどのように安全かつ安定的に行うか、使用済みになった原子炉の廃棄をどのように行うのか等について、国民にていねいに説明し、十分な理解と納得を得た上で進める。


2.政策の展開

 われわれは、「福島のような事故を二度と繰り返してはならない」ことを肝に銘じ、今後のエネルギー政策は「国民の安全」を最優先としたうえで、徹底した事故検証を行うとともに、それを踏まえた具体的な政策を推進する。


・ エネルギー基本計画の見直しによる短期、中期、長期の計画立案と着実な実施を推進する。

  短期(1年 〜 3年)は、当面の電力需給を把握し、必要な電力の確保と、安全確保を前提に原子力発電の再稼働の検討を行う。

  中期(3年 〜 5年)は、節電・蓄電・発電の観点で具体的な政策を練り上げる。

  長期(5年 〜 10年)は、再生可能エネルギー・新エネルギーを中心とした供給への転換を進める。

・ 事故を起こした福島原発周辺には人は住めない。そして、廃炉にも30年 〜 40年かかり、汚染も残る。そこで、原発施設周辺は隔離し、原発施設は地下に埋めて公園にし、世界的なエネルギー先端総合研究所を設置し、林地や農地は、バイオエタノールや太陽光などの再生可能エネルギーの基地として活用し、復活させる。

・ また、放射線の健康に及ぼす影響について、科学的・疫学的知見を持って検証する必要がある。


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